俺様男子はお気に入りを離さない
「……もしかして、足の怪我は嘘?」

「嘘じゃないけどな。でもかなり軽症だった」

「……優しいね」

「……千花子がな」

ぎゅうっと抱きしめる腕に力が込められる。
私もそうっと御堂くんの背に手を添えた。
思ったより大きな背中は男らしくて逞しいけれど、今日はなんだか弱々しく感じる。

人気者でいつも自信満々な御堂くんでも、いろいろ悩んだり考えたりするんだと思うと、ちょっぴり親近感がわいた。

「生徒会も別にやりたいわけじゃなくて」

「えっ?」

「親の圧力に負けた」

「期待されてるってこと?」

「まあ、よく言えば」

「御堂くんでも負けることがあるの?」

「そりゃあな、まだ高校生だし。はやく大人になりたい」

「どうして?」

「どうしてって、そりゃ、堂々と千花子を抱けるし」

「なっ! ちょっ! みみみみみ御堂くんのエッチ!」

一瞬のうちに淫らな想像が頭を駆け巡り、私は飛び退くように御堂くんから離れる。

「そんな動揺することかよ」

「するよ! セクハラじゃん!」

だって、だって、抱くって……どどどどどういうこと? そういうこと……だよね? いや、よくわかんないけど。

私の持てる知識が頭の中で大暴れして大変なことになっている。
そんな私を御堂くんは楽しそうに眺めるだけだ。

くっ、これが大人の余裕ってやつか。
いや、御堂くんは同い年だけど。
< 51 / 75 >

この作品をシェア

pagetop