俺様男子はお気に入りを離さない
エピローグ
あんなに御堂くんから離れなきゃって、強い決意でいた私だったけど、「好き」と言われてもう気持ちは御堂くんへ持っていかれてしまった。
私も御堂くんが好き。
その気持ちに抗うことなんてできなくて。
どんなに断っても、どんなに身を引こうとも、どこまでも追いかけられて簡単に捕らえられてしまう私は本当に単純なんだと思う。

結局私たちは毎日放課後の美術室で会話を重ねている。
もちろん生徒会のある御堂くんはちゃんと生徒会を優先しているし、私も描きかけのキャンバスをもう一度引っ張り出してきて続きを描き始めた。

「もう完成か?」

「御堂くん、お疲れ様」

カラカラという扉を開ける音と共に御堂くんが入ってきた。

季節は冬になり日が落ちるのが早くなった。
まだ夕方だというのに外はもう薄暗く、美術室にも明かりがともる。

「てかお前、いい加減名前で呼べっつっただろ?」

「うっ、慣れないんだってば」

私の横にどっかりと腰を下ろした御堂くんは不満げに頬杖をつく。
御堂くん……薫くんは私のキャンバスをじっと見た。

「花火、楽しかったか?」

「うん、楽しかった。あの思い出を忘れたくなくて」

私のキャンバスには大きな大輪の花火。
濃い青色の夜空を描いていたけれど、あとから花火を付け足した。
夜空は私の感情の浮き沈みが見て取れるくらい色の濃淡に表れている。

「来年も一緒に見ような」

「うん! 見る!」

「千花子ってほんと素直で可愛いな」

「っ!」

「すぐそうやって反応する」

「だ、だだだ、だって。御堂くんがそんなこと言うから」

「名前」

「……薫くん」

おずおずと名前を呼べば薫くんは満足そうに口の端を上げた。
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