死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
家にかえると、いつもの光景。



「た、ただいま」


聞こえてるのか聞こえていないのか、分からないくらいの声量で言う。



「おかえり」


キッチンから声がした。お母さんは今日は出迎えてくれない。



今日は、少し機嫌が悪そう。



リビングに入ると、

「あっ、お兄ちゃん」


明人【あきと】。私のお兄ちゃんだ。
現在高校3年生。ひとつ上のお兄ちゃん。

お兄ちゃんはリビングの椅子でスマホをいじっていた。


お兄ちゃんは、勉強している姿をよく見る。もうすぐ大学だし。



だから、自分の部屋にこもっている時をよく見るので、珍しくリビングにいて小さく驚く。




お兄ちゃんは、こちらにちらっと目を向けると、スマホに目を戻した。



今思えば最近はお兄ちゃんと話をしていなったな。
いつも、私が話をしても無視をしたり、家族から一人だけぬけたような感じ。




勉強や人間関係も大変だし、そりゃあそうだ。





「め、珍しいね。」


「?ああ」
小さく低いぼそっとした声が響く。


「どしたの?」
少し、交流を深めたくて。



「おい」




「ん、ん?」




「何かあった?夏菜」



「…別に…何もない」

お兄ちゃんは見抜く力がすごい。
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