死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「ううう……」



夜の9時。

私は1人自分の部屋で唸っていた。


狭い部屋に、唸声が部屋中に響き渡る。


−コンコンッ


毎回、ドアを叩いて入ってなんてこないのに。


「ん」


−ガチャ


部屋着を着ていて、私と同じ茶色い髪色のお兄ちゃんが心配しているような顔でチラッと私の部屋を覗き込んでいる。




「夏菜の部屋の方から唸声聞こえてくるんだけど猫喧嘩してる?」



マジか。耳がいいお兄ちゃんが間違えるほど私の唸声は猫喧嘩に似ているのか。

でも、ここで私の唸声なんて言ったら、心配されるだろうから、猫の喧嘩ということにしておこう。

そう思ったとき、お兄ちゃんが口を開いた。


「なーんてな。大丈夫?唸声だして」


あ、やっぱりお兄ちゃんはわかっていたらしい。



「全然大丈夫!ごめん。謎の唸声だして」


私は精一杯謝る。


「あーいや大丈夫だけど、なんか悩みごととかあるのかなぁって」

お兄ちゃんは、今まで私が悩んでいたり考えていたりしても、悩みごとがあると言ってくれたことはなかった。

どうしてだろう。



「ん…」


別に、悩み事ではない。確かに、悩んでいたりすることは尽きないけれど、
今の私の唸声の原因は、



爽玖くんとどこの食べ物を食べに行くか。


どんな服を着ていけばいいのか。


男子と遊びに行くなんて。
など色々と考えていたから。

でも、いつもの考え事よりも、考えるのは楽しかった。



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