死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
チケットを買い、中に入る。

無事に着いたことの神様に感謝しながら。


そこには、一度来たことがある景色があった。


「あ、魚」


「いや水族館なんだから魚ですよ」



まず見えた景色は、とても綺麗な中くらいの魚たち。



「爽玖くん水族館ってしっかり答えたのって、魚好きなの?」



遊園地とか水族館どこへ行きたい?という質問をしたとき、曲がりもなく水族館と答えていた。


「魚とか水槽とかって綺麗じゃないですか」



「あー確かにね」



やっぱり爽玖くんは綺麗さを求めているようだった。



水槽に反射した男女二人。



それは紛れもなく私・夏菜と、爽玖くんだった。



…ほんとにデートのような錯覚に至る。



「なんか…めっちゃデートしてる人みたいになってますね…」



私が言おうとしたがやめた言葉を、爽玖くんは頬を赤くしながらゆっくりと途切れ途切れに言った。

私も顔が爽玖くんの倍赤くなっていると思う。


「……ん」

同感したつもりが、変な「ん」が出てしまった。



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