死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「あ、クラゲだ」
クラゲコーナーに入る。
そこには、青色のクラゲ、黄色のクラゲ、透き通るクラゲ、様々な種類がいた。
ふかふか水を漕いでいた。
「……かわいそうですよね」
「え?」
かわいそう…?どうしてだろう。
「人間に見せるために、家族や友達から引き離される。クラゲも苦労してる」
爽玖くんは優しい目でクラゲを眺めていた。それは、小さい頃私も抱いた疑問だ。かわいそうにとは、多分誰だって思う。
「……そうだね。私もそれ小さい頃とかに思ってたな。けど、もう忘れたり思わなくなった疑問や」
急に大阪弁になってしまった。母が大阪人の大阪弁なので仕方ないと思う。
「でも、クラゲって綺麗」
「うん」
爽玖くんはクラゲのように、透明で水に出したらすぐに死んでしまうような、脆くて優しい目だった。
その目は、何を見てきて何を経験してきたんだろう。
「ふふ」
「何笑ってるの」
爽玖くんが自分から笑うなんて。少しだけ笑っている。
でもその笑顔は、脆く弱そうだった。すぐに壊れてしまいそう。
「いや、夏菜さんのくまやばいなぁって」
「ちょっと!?」
意外といじってくる爽玖くんに、ただ笑っていた。