死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「イルカのショー開幕デース!!」

外人っぽい女の人が、手を大きくあげた。



あの後、私達はイルカのショーを見に来た。
混んでいるけど、私達は早くに席取りしたので、前の方で、水がかかるかもしれないエリアなのでかっぱを着用している。

隣に爽玖くんが座っている。


イルカ紹介等を終えた。

「せえのぉ〜!」



イルカがぴょんぴょん飛び跳ねたりしている。かわいらしいイルカに私は拍手をする。

爽玖くんの方を見ると、無表情でじーっと見つめていた。



「じゃあ大っきいやつー行きますよー…」


私は水が飛んでくるのを覚悟する。


「せえのぉ!」


−バッッチャン!!!!!!

水槽からすごい音がして、水の雫がこちらに飛んでくる。


私は端っこなのであまり当たらなかったが、隣の爽玖くんには大量に水が当たっていた。


「え!?やばい爽玖くんだいじょぶ!?」


「…あー」

やられた…みたいな顔をしていたので笑ってしまった。
爽玖くんはじーっと私の笑いを見つめていた。


人間とイルカが共同で行うショーだからこんなにもすごいんだろうな。

イルカが3回転を成功させたり、めっちゃ上に吊るされたボールを触れたり、その時間は今までに、ないくらい、楽しかった。



爽玖くんだからだろう。


家族や友達と来ても面白かったと思う。
けど、不思議な無表情の爽玖くんときたからこそ、
この楽しさを私は味わうことができたんだと思う。

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