死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
もう、手紙を読んだだろうか。


俺は教室の端っこにある自分の席から、いつも通り窓を眺める。

青くて優しくてきれいな雲。


後ろの席には佐藤 心という女子が俺を不思議そうに覗いている。




「…新川くん」



心が俺の隣に来る。



「?」



首を傾げる。初めて話す。どうしたんだろう。

秋を知らせる風が、俺の頬を通っていくのを感じた。




「好きな人、いる?」




好きな、人。




「いない」



俺は即答した。




「ほんと?その人に会いに行かなくていいの?」
 

「どうしたんだよ急に」

俺はゆっくりと聞く。
人と目を合わせるのがこわいので、下を向く。



「…もう、いなくなってしまいそうだから」



「え」


どうして、わかるんだろう。
俺とは初めて話したはずなのに。



「好きなんでしょ?夏は終わる」



「…」

好きってなんなのかよくわからない。

何を心は伝えたいのか、よく考えたのだが分からなかった。


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