死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「だから俺は一緒に死なないかと誘った」
「え」
「誤って死にたかったんです。バカですよね我ながら」
爽玖くんは、また笑う。その笑顔は私の、大好きな笑顔だ。
「ううん。バカじゃないよ」
私は、昔と同じように、できるだけ優しく語りかけた。
爽玖くんは、笑顔で泣いている。
「やっぱり、君の笑顔が私は好きだ」
この言葉は自信を持って言える。そう自覚した。
「俺も。今の夏菜さんの笑顔が、俺は好き」
前にも言われた、笑顔が好きという言葉。
また私は鼻の奥がツンとなって、涙がもっと出てきた。
その笑顔は温かい光に包まれていた。
「なんで嘘付いたの?私が爽玖くんを…助けたっていうのは…」
あの日。教室で爽玖くんは「その女の子、私じゃないんでしょ?」という質問に、「はい。」と答えた。それって…?
「今のあなたじゃないですから。昔の夏菜さんが助けてくれたので」
私は笑ってしまった。
「なんだよそれ」
「昔の、優しくてかっこいい夏菜さんに助けてもらったので」
「はは…またそうなれるよう、頑張ります」
私は小さくガッツポーズして、頑張ることをまた選ぶ。