死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「生きて、くれますか」
告白されたみたいに、私も爽玖くんのように敬語を使う。
「はい。生きますよ」
爽玖くんは、やれやれという感じなのだが、私はとても嬉しかった。
「ほ、ほんとに!?よかった」
「え?夏菜さん…」
−私は爽玖くんに抱きついていた。
爽玖くんの顔は見えないけれど、「え」という言葉が聞こえる。
「え?あ、ごめん!!」
私は離れようとするが、離れない。まずい。男子に抱きつくなんて…何してんだ私。
でも、生きてくれるって、嬉しかったから。
「え?爽玖くん?」
「このままで。いいです」
爽玖くんの温かさが、とても恥ずかしくて倍くらいに熱く感じる。火傷するかと思った。
そして、私は言葉を続ける。
「わ、私と…って、私なんかだけど…。
今を、生きよう。全力で。
その、私の為でいいから、生きてほしい。辛いことがあっても。」
「2回目ですよ。それに、あなたはなんかじゃない。自信を持ってください」
私は、爽玖くんのような体験をしたことがないから。優しい家族はいたし、いじめてくる人もいなかった。
そんな私が言える資格なんかない。でも、言わなきゃと思った。
涙が溢れ出て、爽玖くんの制服にシミが残る。
でも、それは私の制服の肩も同じだ。
私の背が低いのか、爽玖くんが高いのか、同じ目線にいる。