死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「夏菜さん」


爽玖くんは、私に声を優しくかける。


「ん?」



「本当の自分がわからないって言ってたけど」

本当の自分。それは、私が叫んだ中に入っていたこと。わからないのは、今もだ。


「…」


「あなたです」


「…へ?」


私…?何を言ってるんだろう。理解できない。




「今を生きるあなたです。そこにいるあなたが、本当の自分です」




わからなかった。
笑顔を見せて、むりやり笑っていたような私が、本当の自分なんてわからなかった。


でも、そんな単純なことにも気づかなかった。
馬鹿だ私。人の言葉に、こんなにも動かされたのは初めてだった。


本当の自分は、そこにいる自分。

そうだ。元々そんなものはいない。

今を生きる自分が、本当の自分なんだ。


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