死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「爽玖くん。ありがとう。きみは、死にたがりやな君は、私のヒーローだったよ」
私はくしゃくしゃな泣き顔で全力で笑った。この世界でも。この2人の空間は、別世界に見えた。
「ありがとう。俺のヒーローは、死にたがりやなあなたでしたよ。俺、助けてほしかったんだと思う。やってくれましたね」
私と口調を共にする。
「…ってか死にたがりやは君でしょ!」
「いえ夏菜さんもです」
爽玖くんは、笑う。
辛くて悲しい今を、全力で1秒1秒。
生きているのだ。
その人の顔は、きっと美しいんだろう。
「だい、すきです。昔から、ずっと」
途切れ途切れな声は、世界一愛おしく感じた。
好きな人も今までいなかったし、好きな人なんて一生出来なさそうと、言われていた私にとって、本当に嬉しかった。
それに、爽玖くんが言ってくれるなんて。
「私も。だいすきだよ」
その言葉は、1ミリもブレてはいなかった。
2人抱き合う。
優しくて死にたがりやなヒーローさんは、
温かい。その温かさに涙が溢れた。
その時秋風はおさまり、暑く綺麗な青空がそこにはあった。
あの告白を受けたあの日と、全く同じ青空だった。