死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「付き合ってるってことで…いいの?」
彼女は、頬を赤く染めながら、俺と目を合わせてくる。俺の黒い瞳とは違い、茶色い瞳を。
「ふふ。はい。いいんじゃないですか」
俺は小さく笑いながらそういうことにした。
「わ…そっか。つきあう…か…」
「え、や!まだわからないので。嫌だったら嫌でいいので!!」
俺は必死に否定をするが、彼女は嬉しそうな顔をする。
「ううん!嬉しいかも。私」
「…え」
少し否定されるかと思っていたので、1つのえという言葉がでる。
「こういうの…あんまりわからんねんけど…多分、嬉しい」
彼女は、ゆっくりと理解するように、同情してくれた。
「俺も…あんまりわからないんですけど…嬉しいんだと」
俺も同じようにゆっくりと理解する。
「っていうか俺たち抱きあっ−」
「ちょっ、それ言わないで…」
彼女は恥ずかしそうに、下を向いた。
「好きだって…言ったし…」
「ん…」
なんとなく気まずくなった。でも、その気まずさも、今となれば辛くはなかった。
「ん。じゃあ…まあよろしく」
なぜか彼女は手を差し出してくる。
「…はい」
俺も手を握りかえす。でも、今までも色々な場所へ行ったし、色々な話をした。なので、付き合ってると同等だったと思う。
多分、彼女も同じことを思っている。
「…前と変わらず爽玖くんのことは大好きだから」
彼女は、頬を限界まで赤くしていた。
俺も同等に頬やら顔やらがあつい。
「ふふ。俺も好きです。夏菜さんのこと」
俺も、また告げる。
「へ…」
「なんで驚いてるんですか?前にも言ったのに」
「ん!ふふ」
柔らかいふふっとした笑顔を俺に向ける。可愛くて優しい、そんな笑顔が俺は、
「やっぱり好きだ」
俺は無意識のうちに言っていた。
「何回言うの」
またふふっと彼女は笑う。
「じゃあまた、がんばろうね。大学受験がんばって!」
あまり最近は忙しく、会えない事が多くなった。が、それでも。
「はい!がんばります。好きです」
「だから何回言うの。私も…好きです」
ふふっと夏菜さんは笑う。
死の告白から始まった、愛の告白が実現されたのだった。
死にたがりやな君は、私の、そして、俺の、ヒーローでした。