死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
「あ、あのさ!」

さあ、勇気を持て。夏菜。
爽玖くんの事、もっと知って、

自殺を止めるんだ。

「あ、俺早く教科書届けないとなので。もう行きます。」

「あ、はい。」
負けた。うう。

「あの…持とうか?」
軽々しく持っているけど、本当は重いかもしれない。

「いえ、全然大丈夫です。」

「あ、はい。」
断られてしまった。

そう言いながら、爽玖くんは歩き出した。

その瞬間。

バタッバタッバタ…

「あ…」
教科書が爽玖くんの手からバタッと床へ落ちていく。

なんだ、ホントは重かったのかな?

「大丈夫?」
私もそう言いながら、教科書を拾い集める。

「す、す、すいません。。」
お、爽玖くんがなんだか戸惑ってる。
初めて見る光景だ。


「あ、ホントは重かったの?」

「いや、えっと…。た、ただ落ちただけです…!」

こんな爽玖くん、初めてみた。
なんか強がってるみたいで、意外と可愛いなぁ

「ははっ意外と可愛いんだね、爽玖くんって」
心の中の言葉がいつの間にか出ていた。

「は?ちょ、何言ってるんです?」
見ると頬や耳が少し赤い。ホントは恥ずかしがり屋なのかもしれない。

「あと、俺と早く死ぬなら死んでくれます?もう俺、早く死にたいんですけど。」

急に雰囲気が一変する。いい雰囲気を破壊してくる爽玖くんを見てははっと吹き出す。

「ごめんごめん。」

よし、今度こそ。
< 21 / 195 >

この作品をシェア

pagetop