死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。
太陽が沈みかかっていた。




とても綺麗だ。



「あ、もうこんな時間ですね。」



黒板の上に掛かっている時計を見ると、あっという間に5時に針が指していた。


「あ、ホントだ。あっという間だね。」



気がつくと、爽玖くんと2人で、

夕陽を見つめていた。



私は顔が、赤くなっているだろう。



爽玖くんの横顔は、とっても綺麗だった。

夕陽を見つめる爽玖くんの目は、とても優しいオレンジ色が映っている。



「綺麗…。」



思わず見惚れて、爽玖くんの方を向いて心の中の言葉を口に出していた。



「ホントだ。夕陽、すごく綺麗。」




「あっ。」



夕陽も綺麗だけど、さっきの綺麗…。は、爽玖くんのオレンジ色が映る目が、素直で優しくて、綺麗だということだった。
そのことはあえて言わないことにした。



「どうしたんですか?」


爽玖くんがさっきの私のあっ、はなんなのか聞いてきた。



私は顔が赤くなっているだろうと自覚しながら「何でもない」と答えた。



「じゃあ、俺、帰ります。ありがとうございました。」

爽玖くんはそう言いながら椅子から立ち上がる。


「あ、うん。あの、ま、また明日ね!」



明日も会いたい。爽玖くんに。戸惑いを隠せていないけど、勇気を持って、言った。

正直、もっと一緒に話をしていたかったな。
この気持ちは…なんなのだろうか。



そして、爽玖くんは背を向け、ドアを開けて、最後に私に振り向いて言った。



「また明日。」



また爽玖くんは少しだけ、笑っていた。



その顔は、どこか少し懐かしさを感じさせた。
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