死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。


「うん。今日は雨だね」



「はい。ですね」


爽玖くんは、昨日笑ったあとからはもう笑うことはなかった。今も無表情。



「私雨好きだなぁ。
変な人とか思われるかもだけどさ」




窓の先の、無数の雨を見る。雨の匂い、雨のこの雰囲気。本当に好きだ…。


私は爽玖くんの前だと、なんだが落ち着いて正直に色々と言える気がした。



「俺も。好きだな。」



それは雨のこと。だとわかっていても、なんだか爽玖くんが好きだというと、

どうしても愛の告白に聞こえてしまう…。


勝手に自分の思い込みで、顔が赤くなっていると思う。


爽玖くんは私と同じように、窓の先の、雨を見ながら言う。


その横顔も、またしても美しかった。



「夏菜さん?顔赤いですよ…?」



「あ!ああ!!ご、ごめん何でもない。」
 

慌てて言いすぎた…。。必死に顔を見られないように手で覆い隠すけど、多分見られている。



「?大丈夫ですか?」


心配してくれる爽玖くんに、私は大丈夫!と返す。


「雨…好きなの?」


話をそらすために、という目的と、私が聞いてみたかった質問。


「はい。小さい頃は嫌いだったけど…今は…大好きなんです…。」


お、珍しく爽玖くんは自分のことを話してくれた。

私は爽玖くんが話しやすいようにうなずいて笑顔で聞く。


「あ!そうなんだ。」


「ねぇ、私ね。永野夏菜っていう名前さ。〈な〉が3つついてるねん!すごいよね。

なに恵まれてる」


「そうですね。」


持ちネタ?みたいなのを披露した。


やっぱり駄目だ。クラスメイトの時もそうだったけど、やっぱりこのネタあんまだな。
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