死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。

「でも…夏菜さんに言われたくなかった」



私は次の言葉を待つ。黙って聞いておく。


「俺が生きる意味があるのなら、夏菜さんは100倍はあります。」


どうして、私は生きる意味が爽玖くんの100倍も…?
なんで100倍と例えるの?と、

笑いそうになってしまう。

でも、真剣な目にいつも通り笑うことができなかった。

爽玖くんのような優しい素直な人のほうが、意味なんてきっとある。



「だから…夏菜さんも…自分らしく生きて下さい」



私は…自分らしく生きているのだろうか。


不意にそう思った。



いつも笑って、

下手で不器用なのに

空気をできるだけ合わせ、

雰囲気を作り、嘘だらけの自分だった。

私は明るいよねと、

言われても、

あまり嬉しくないのは

そういうことなのかもしれない。



< 50 / 195 >

この作品をシェア

pagetop