死にたがりやな君は、わたしのヒーローでした。

「鳴っちゃいましたねー。」




「はは…じゃあ…教えて…!」




「はい」

彼女は笑顔で頷いてくれる。


「あ、じゃああの階段の踊り場のとこ行こう」

そして、二人で踊り場で壁に背を持たれ、話しはじめた。

皆教室に帰ったのだろう。

一呼吸して、話し始めた。



「新川くんは…不思議な子で」



この子なら普通の子よりも戸惑わず話せる気がする。



「いつも真顔なんです。」
 


真顔…。あの爽玖くんの無表情のことだろう。


「真顔ね…。 」

驚きはしない。想像ができたから。


「笑わ…ないんです」



「そっか…」



「でも…」



「?」
 

「悪口を言われたり、嫌なあだ名を付けられたり、悲しいことだと思うのに、その時、

彼は笑うのです」


「え…?何言って」

予想外な言葉が飛び込んできて困惑する。


爽玖くん…やっぱり、そういう嫌ないじめ的なのあるんだ。

でも真顔の爽玖くん。あだ名つけられて…仕方ない事なのかも…しれない…。

でも、私のクラスだって、私だってそういうことはある。



「ですよね。しかも、可愛らしい子供のような無邪気な笑いをするんです」
 


「え…?」


「怖いとか、気持ち悪いとか…言われても…あの愛らしい笑顔をするんです。だから…気になってて」



「そう…なん…だ。なんで…笑うんだろね」


嫌な言葉を…嫌なあだ名…。その言葉を言われたら、彼は笑う。

どうして…笑う…?

私だったら。いや、他の誰でも笑うなんてしないと思う…。

私も…ある。笑われたり、悪口言われたり、あだ名つけられたり。

「はい」
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