期末テストで一番になれなかったら死ぬ
二学期の期末テストは十二月上旬に行われる。
十月下旬の中間テストからはおよそ一ヶ月半の時間がある。
時間がある? 違う。一ヶ月半しかないのだ。
中間テストで八位。そこから更に順位を上げるとなると、一ヶ月半ではとても足りない。
最下位から中位まで成績を上げるのは、正直そんなに難しくもないと思う。自分の理解とか勉強方法に問題があるか、そもそも勉強していないかだから、やることをやれば成績は伸びる。
だけど上位になるのは訳が違う。上位勢は当然の如くに授業範囲を理解して、適切な勉強量を相応にこなしている。そこに食い込むというのは生半なことではない。よく中間テストで八位になれたものだと今更ながら、そして我ながら感心する。
問題は時間以外にもある。
誰にも言えない悩みが、私にはある。
鹿島くんは本当に期末テストを受けられるのか? 受けたら一番になれるのか?
そんな疑問が脳裏にこびり付いて離れない。
やけくそでも何でも、夢中になって勉強できたらどれだけ楽だろう。
報われるか分からなくても猶努力を払うというのは、これもまた半端な精神力では成し得ない。
でも、今の私には鹿島くんがいる。
私があれこれ心配する以前に、鹿島くん本人こそが今不安と戦っているはずだ。
そして努力を続けているはずだ。
だったら私が諦めるわけにはいかない。
鹿島くんの存在が、私を机に向かわせた。
最近、希帆さんは自分の鍵で家に入ってくるようになった。
以前は必ずインターホンを鳴らし、私がドアを開けに出ていたけれど。
小さなことだし、希帆さん本人は何も言わないけれど、ようやくここを自分の家だと思えるようになったのかもしれない。
あと、希帆さんは私の部屋にも入るようになった。
机で勉強しながら寝落ちしたときなど、朝目覚めたら毛布や掛け布団を掛けられている、といったことがしばしばある。
そうしたときは、起きた後、リビングやキッチンで「体調管理!」と叱られるのまでがセットだ。
私のスマホには、相変わらず『アイドリング・ストップ!』が入ったままになっている。
もうスタミナの溜まり具合も気にならないし、ライブもやってはいないけれど、勉強をするときには必ずレネの顔を見てからしている。
高校生ながらに単身上京し、家事も仕事も勉強も休まず頑張り、分からないと泣きながら勉強したり、『実家に帰ってこい』と言われても仕事で結果を出して両親を納得させたり。
レネは、夢へと向かう道の途中、一時停止しながらも必ずまた走り出している。
そんなレネを見て、私なんてまだまだと気合いを新たにするのが私のルーティーンなのだ。
学校では、相変わらず鹿島くんの姿を見なかった。
放課後には空き教室に言った
どうしているのか、安曇に訊くこともできなかった。
いや、訊く必要がなかったというべきか。
最近の安曇は、教室でずっと勉強をしていた。
答えはそれで十分だった。
そして十二月九日、月曜日。
いよいよ期末テストが始まる。
十月下旬の中間テストからはおよそ一ヶ月半の時間がある。
時間がある? 違う。一ヶ月半しかないのだ。
中間テストで八位。そこから更に順位を上げるとなると、一ヶ月半ではとても足りない。
最下位から中位まで成績を上げるのは、正直そんなに難しくもないと思う。自分の理解とか勉強方法に問題があるか、そもそも勉強していないかだから、やることをやれば成績は伸びる。
だけど上位になるのは訳が違う。上位勢は当然の如くに授業範囲を理解して、適切な勉強量を相応にこなしている。そこに食い込むというのは生半なことではない。よく中間テストで八位になれたものだと今更ながら、そして我ながら感心する。
問題は時間以外にもある。
誰にも言えない悩みが、私にはある。
鹿島くんは本当に期末テストを受けられるのか? 受けたら一番になれるのか?
そんな疑問が脳裏にこびり付いて離れない。
やけくそでも何でも、夢中になって勉強できたらどれだけ楽だろう。
報われるか分からなくても猶努力を払うというのは、これもまた半端な精神力では成し得ない。
でも、今の私には鹿島くんがいる。
私があれこれ心配する以前に、鹿島くん本人こそが今不安と戦っているはずだ。
そして努力を続けているはずだ。
だったら私が諦めるわけにはいかない。
鹿島くんの存在が、私を机に向かわせた。
最近、希帆さんは自分の鍵で家に入ってくるようになった。
以前は必ずインターホンを鳴らし、私がドアを開けに出ていたけれど。
小さなことだし、希帆さん本人は何も言わないけれど、ようやくここを自分の家だと思えるようになったのかもしれない。
あと、希帆さんは私の部屋にも入るようになった。
机で勉強しながら寝落ちしたときなど、朝目覚めたら毛布や掛け布団を掛けられている、といったことがしばしばある。
そうしたときは、起きた後、リビングやキッチンで「体調管理!」と叱られるのまでがセットだ。
私のスマホには、相変わらず『アイドリング・ストップ!』が入ったままになっている。
もうスタミナの溜まり具合も気にならないし、ライブもやってはいないけれど、勉強をするときには必ずレネの顔を見てからしている。
高校生ながらに単身上京し、家事も仕事も勉強も休まず頑張り、分からないと泣きながら勉強したり、『実家に帰ってこい』と言われても仕事で結果を出して両親を納得させたり。
レネは、夢へと向かう道の途中、一時停止しながらも必ずまた走り出している。
そんなレネを見て、私なんてまだまだと気合いを新たにするのが私のルーティーンなのだ。
学校では、相変わらず鹿島くんの姿を見なかった。
放課後には空き教室に言った
どうしているのか、安曇に訊くこともできなかった。
いや、訊く必要がなかったというべきか。
最近の安曇は、教室でずっと勉強をしていた。
答えはそれで十分だった。
そして十二月九日、月曜日。
いよいよ期末テストが始まる。