【重愛注意】拾われバニーガールはヤンデレ社長の最愛の秘書になりました 2
好きな女性がいるんだ
「もっと悪い女だったら、ガッツリ言い負かして叩き出してやったのに」
「えぇ!?」
驚いて目をまん丸にして澪を見たが、彼女は半眼になってこちらを見ている。
「何かこう……善人オーラが出ててやりづらい。……でも、裏があるかもしれないから、気は抜かないけどね!」
「は、はい……」
ビシッと指を突きつけられ、香澄は思わず頷く。
自分でも気付いていない裏の顔はあるかもしれないので、「裏なんてありません」と言うのはやめておく。
「ねぇ、嫌だったらいいんだけど、部屋見せてくれる?」
「あ、はい」
「佑が香澄さんをどういう扱いしているのか、一応知っておきたくて」
「とても良くして頂いています」
香澄は立ち上がり、澪と一緒に二階に上がる。
そして香澄の至れり尽くせりな部屋を見て、澪が「初孫を祝う爺さんか!」と叫ぶのはすぐの事だった。
**
「それはそうと、澪が出掛けた先を今思い出したんだけど、あんたの家に行くって言ってたわね」
「は!?」
寛いでいたところ、時計を確認したあとにアンネが口にした言葉に、佑はギョッとして声を上げる。
「澪が!? うちに!?」
(まずい!)
「どうしたのよ」
悠然と構えたアンネに尋ねられたが、佑は無視して立ち上がる。
「行き違いになったら困るだろ。帰る」
コートを羽織りながら、佑は少し苛ついた顔で母に尋ねる。
「分かっていたなら、何でさっき言わなかったんだ。まるでタイミングを見計らっていたみたいに……」
「澪に佑が来てから四十分後に言うようにと、頼まれていたの」
「四十分……」
妙に細かい数字に、妹の計算高さが窺える。
「……とりあえず、帰る。小野瀬さんとはお会いするけど、そのあとの事については、勝手に決めるのはやめてくれ」
「留意しておくけど、あなたこそ一度会ったらあとはまたしばらく連絡なしとか、やめてよね」
「それはない」
「へえ? 言い切るじゃない」
興味を示したアンネに、佑は不本意ながら打ち明ける。
「好きな女性がいるんだ。だから、今後こういう話は受けない」
「じゃあ、紹介しなさいよ」
会話はいつもアンネが主体だが、衛も興味津々という顔で佑を見ている。
「まだ紹介できる段階じゃないんだ。きちんと順を追って、紹介できるようになったら、場を設ける。大切にしたいから、もう少し待っててくれ」
「中途半端な付き合いをしているわけ?」
「違う。そうじゃなくて……」
佑が溜め息をついた時、衛がアンネに声を掛けた。
「アンネさん、佑が『待ってほしい』って言うんだから、そのお嬢さんを紹介してくれるまで待とう。僕たちだって、すぐお互いの両親に挨拶したわけじゃないだろう? 佑は恋愛に対して慎重な子だから、その気持ちを汲んであげよう」
穏やかな声で言われ、アンネは息をつく。
「……あなたがそう言うなら、待ってもいいけど……」
一見この夫婦を見ると、アンネの強烈な性格から衛が彼女の尻に敷かれている……と考えがちだが、意外とアンネを上手に操作しているのは衛の方だったりする。
「とにかく、約束は守ってくれ。俺も守るから」
最後に佑はそう告げて「じゃあ」と慌ただしく玄関に向かった。
**
慌てて帰宅した佑は、玄関に見慣れない女性物の靴があるのを確認し、顔を歪める。
――と、二階から「きゃあっ」と香澄の悲鳴が聞こえて、サッと顔色を青くした。
「香澄!」
靴を脱ぎ捨てて階段を駆け上がり、佑は廊下で足を滑らせながら香澄の部屋を覗き込む。
「え……っ? ちょ……っ」
一瞬目に入ったのが、香澄がベッドの上に仰向けに押し倒され、その腰の上に澪が跨がっている姿なので、佑は完全に固まってしまった。
だがすぐに持ち直し、「澪!」と妹を止めにかかる。
「佑さん!?」
香澄は佑の姿に気づいて声を上げ、澪が後ろを振り向く前に、佑が妹の体を抱え上げた。
「わっ! ちょっと!」
ヒョイッと抱き上げられてさすがに驚いたのか、澪が声を出す。
そんな妹をストンと下ろし、佑は深い溜息をついた。
「何やってるんだ」
「え? 香澄さん、胸でかいから揉ませてもらおうと思って」
「はぁ?」
(俺でさえ、十分に揉めてないのに!)
思わず心の中で突っ込みを入れ、佑は困惑した声を上げる。
「……とにかく……。母さんまで巻き込んで、うちに突撃する真似はやめてくれ」
佑は溜め息をついて床に座り込み、妹を見上げてもう一度息をつく。
「佑!」
「わっ」
と、澪がいつものように飛びついてきたので、今度は佑が押し倒される事になる。
佑はコートを着たまま、どてっと床の上に仰向けになる。
胸元にグリグリと顔を押しつける妹を、佑は溜め息をつきながらとりあえず宥めるのだった。
部屋を見せている間に、澪が「香澄さんって胸でかいよね」と言いだし、ふざけてワチャワチャしているうちに、ベッドに押し倒されてしまった。
その直後に階段を駆け上がる音がし、佑が突然現れたので驚いた。
おまけに佑は力技で澪を抱き上げ、そのまま懐かれて押し倒されている。
(……大型犬みたいだな……。言ったら怒られそうだけど)
とりあえず起き上がって麗しい兄妹を見ていると、澪ごと起き上がった佑が尋ねてきた。
「大丈夫か?」
「はい」
「澪に変な事を言われてないか?」
「ちょっと、何ソレ?」
「いえ、特に」
香澄の返事を聞き、佑は溜め息をつく。
「澪、もう一度言うけど、こうやって突撃するのはやめてくれ」
じ……と妹を見つめ、佑は兄らしく注意する。
「だって……。佑の様子がおかしかったんだもん」
「おかしかったって……、見張ってたのか?」
「そうじゃないけど、一月、帰らなかったじゃない。いっつも月一で私とデートしてくれるのに」
「あぁ……、悪い。忙しかったんだ」
「まぁ、理由は分かったけど」
澪が香澄を見て、ぶすっと下唇を出してむくれる。
「佑、香澄さんと結婚するの?」
澪がド直球な質問をし、佑は一瞬目を見開いて香澄を見る。
そこまで教えたのか、という感情が見えたので、香澄は慌てて謝ろうとした。
「あの」
「そうだ」
だがそれよりも早く、佑が先に返事をする。
「香澄から聞いたかもしれないけど、出会ったばかりの香澄を俺が強引に連れてきた。すぐ結婚するまで、まだ付き合いを深められていないから、今すぐの話じゃない」
「でも結婚するんだ」
「いつかは」
「ふーーーーーーん……」
澪に絡まれ、佑は疲れたように息をつく。
「香澄、ごめん。相手をしてて疲れただろう」
「いえ。お話できて良かったです」
その返事を聞いて佑は頭を掻き、妹に向き直った。
「まだ、他の家族には秘密にしておいてくれないか? 今も言った通り、真剣に付き合いを深めている途中なんだ。せっかく大切にしているのに、横やりを入れたくない。香澄の気持ちが結婚に向けて整うまで待って、それから家族に紹介するから」
佑は澪の目をまっすぐ見て告げる。
「…………分かった。でもその代わり、私には香澄さんとの進展を逐一教えてよね」
交換条件を出され、佑は溜め息をつく。
「……香澄、いいか?」
「え、あ、はい。勿論」
香澄が了承した事により、澪がガッツポーズを取った。
「えぇ!?」
驚いて目をまん丸にして澪を見たが、彼女は半眼になってこちらを見ている。
「何かこう……善人オーラが出ててやりづらい。……でも、裏があるかもしれないから、気は抜かないけどね!」
「は、はい……」
ビシッと指を突きつけられ、香澄は思わず頷く。
自分でも気付いていない裏の顔はあるかもしれないので、「裏なんてありません」と言うのはやめておく。
「ねぇ、嫌だったらいいんだけど、部屋見せてくれる?」
「あ、はい」
「佑が香澄さんをどういう扱いしているのか、一応知っておきたくて」
「とても良くして頂いています」
香澄は立ち上がり、澪と一緒に二階に上がる。
そして香澄の至れり尽くせりな部屋を見て、澪が「初孫を祝う爺さんか!」と叫ぶのはすぐの事だった。
**
「それはそうと、澪が出掛けた先を今思い出したんだけど、あんたの家に行くって言ってたわね」
「は!?」
寛いでいたところ、時計を確認したあとにアンネが口にした言葉に、佑はギョッとして声を上げる。
「澪が!? うちに!?」
(まずい!)
「どうしたのよ」
悠然と構えたアンネに尋ねられたが、佑は無視して立ち上がる。
「行き違いになったら困るだろ。帰る」
コートを羽織りながら、佑は少し苛ついた顔で母に尋ねる。
「分かっていたなら、何でさっき言わなかったんだ。まるでタイミングを見計らっていたみたいに……」
「澪に佑が来てから四十分後に言うようにと、頼まれていたの」
「四十分……」
妙に細かい数字に、妹の計算高さが窺える。
「……とりあえず、帰る。小野瀬さんとはお会いするけど、そのあとの事については、勝手に決めるのはやめてくれ」
「留意しておくけど、あなたこそ一度会ったらあとはまたしばらく連絡なしとか、やめてよね」
「それはない」
「へえ? 言い切るじゃない」
興味を示したアンネに、佑は不本意ながら打ち明ける。
「好きな女性がいるんだ。だから、今後こういう話は受けない」
「じゃあ、紹介しなさいよ」
会話はいつもアンネが主体だが、衛も興味津々という顔で佑を見ている。
「まだ紹介できる段階じゃないんだ。きちんと順を追って、紹介できるようになったら、場を設ける。大切にしたいから、もう少し待っててくれ」
「中途半端な付き合いをしているわけ?」
「違う。そうじゃなくて……」
佑が溜め息をついた時、衛がアンネに声を掛けた。
「アンネさん、佑が『待ってほしい』って言うんだから、そのお嬢さんを紹介してくれるまで待とう。僕たちだって、すぐお互いの両親に挨拶したわけじゃないだろう? 佑は恋愛に対して慎重な子だから、その気持ちを汲んであげよう」
穏やかな声で言われ、アンネは息をつく。
「……あなたがそう言うなら、待ってもいいけど……」
一見この夫婦を見ると、アンネの強烈な性格から衛が彼女の尻に敷かれている……と考えがちだが、意外とアンネを上手に操作しているのは衛の方だったりする。
「とにかく、約束は守ってくれ。俺も守るから」
最後に佑はそう告げて「じゃあ」と慌ただしく玄関に向かった。
**
慌てて帰宅した佑は、玄関に見慣れない女性物の靴があるのを確認し、顔を歪める。
――と、二階から「きゃあっ」と香澄の悲鳴が聞こえて、サッと顔色を青くした。
「香澄!」
靴を脱ぎ捨てて階段を駆け上がり、佑は廊下で足を滑らせながら香澄の部屋を覗き込む。
「え……っ? ちょ……っ」
一瞬目に入ったのが、香澄がベッドの上に仰向けに押し倒され、その腰の上に澪が跨がっている姿なので、佑は完全に固まってしまった。
だがすぐに持ち直し、「澪!」と妹を止めにかかる。
「佑さん!?」
香澄は佑の姿に気づいて声を上げ、澪が後ろを振り向く前に、佑が妹の体を抱え上げた。
「わっ! ちょっと!」
ヒョイッと抱き上げられてさすがに驚いたのか、澪が声を出す。
そんな妹をストンと下ろし、佑は深い溜息をついた。
「何やってるんだ」
「え? 香澄さん、胸でかいから揉ませてもらおうと思って」
「はぁ?」
(俺でさえ、十分に揉めてないのに!)
思わず心の中で突っ込みを入れ、佑は困惑した声を上げる。
「……とにかく……。母さんまで巻き込んで、うちに突撃する真似はやめてくれ」
佑は溜め息をついて床に座り込み、妹を見上げてもう一度息をつく。
「佑!」
「わっ」
と、澪がいつものように飛びついてきたので、今度は佑が押し倒される事になる。
佑はコートを着たまま、どてっと床の上に仰向けになる。
胸元にグリグリと顔を押しつける妹を、佑は溜め息をつきながらとりあえず宥めるのだった。
部屋を見せている間に、澪が「香澄さんって胸でかいよね」と言いだし、ふざけてワチャワチャしているうちに、ベッドに押し倒されてしまった。
その直後に階段を駆け上がる音がし、佑が突然現れたので驚いた。
おまけに佑は力技で澪を抱き上げ、そのまま懐かれて押し倒されている。
(……大型犬みたいだな……。言ったら怒られそうだけど)
とりあえず起き上がって麗しい兄妹を見ていると、澪ごと起き上がった佑が尋ねてきた。
「大丈夫か?」
「はい」
「澪に変な事を言われてないか?」
「ちょっと、何ソレ?」
「いえ、特に」
香澄の返事を聞き、佑は溜め息をつく。
「澪、もう一度言うけど、こうやって突撃するのはやめてくれ」
じ……と妹を見つめ、佑は兄らしく注意する。
「だって……。佑の様子がおかしかったんだもん」
「おかしかったって……、見張ってたのか?」
「そうじゃないけど、一月、帰らなかったじゃない。いっつも月一で私とデートしてくれるのに」
「あぁ……、悪い。忙しかったんだ」
「まぁ、理由は分かったけど」
澪が香澄を見て、ぶすっと下唇を出してむくれる。
「佑、香澄さんと結婚するの?」
澪がド直球な質問をし、佑は一瞬目を見開いて香澄を見る。
そこまで教えたのか、という感情が見えたので、香澄は慌てて謝ろうとした。
「あの」
「そうだ」
だがそれよりも早く、佑が先に返事をする。
「香澄から聞いたかもしれないけど、出会ったばかりの香澄を俺が強引に連れてきた。すぐ結婚するまで、まだ付き合いを深められていないから、今すぐの話じゃない」
「でも結婚するんだ」
「いつかは」
「ふーーーーーーん……」
澪に絡まれ、佑は疲れたように息をつく。
「香澄、ごめん。相手をしてて疲れただろう」
「いえ。お話できて良かったです」
その返事を聞いて佑は頭を掻き、妹に向き直った。
「まだ、他の家族には秘密にしておいてくれないか? 今も言った通り、真剣に付き合いを深めている途中なんだ。せっかく大切にしているのに、横やりを入れたくない。香澄の気持ちが結婚に向けて整うまで待って、それから家族に紹介するから」
佑は澪の目をまっすぐ見て告げる。
「…………分かった。でもその代わり、私には香澄さんとの進展を逐一教えてよね」
交換条件を出され、佑は溜め息をつく。
「……香澄、いいか?」
「え、あ、はい。勿論」
香澄が了承した事により、澪がガッツポーズを取った。