君の一番は僕がいい
警察に連絡を入れた俺たちは花沢を送るため、警察には立ち会わず向かった。
花沢が亜久里たちのせいにしたい理由は罪を擦り付けたいから。
花沢も自分のせいで自殺したなんて思いたくないだろうから。
人として正しいなと思った。
しかし、なぜ警察に連絡がすぐ行かなかったのか。
死体があれば、誰かが見つけて連絡するだろうけど……。
まあ確かに、あの場に来る人はいないだろうし、通っている間も人はいなかった。
クマの存在が知れ渡っているのかわからないが……。
「クマの正体、分かっているのになんで教えてくれないの?」
花沢が言った。
「言う必要なくね?もうわかってるだろう」
「……そうだけど」
「俺だって信じたくはないけどさ」
「どうしたらいいんだろう……きゃっ!!」
刹那、前方へと飛ばされた彼女は地面を転がり横たわった。
動けないのか、何も反応がない。
死んだ……?
いや、まさか。
横で空を切る音が聞こえると、途端に花沢のもとへとそいつは向かった。
クマだ。
やっぱり、関係しているんだ。
花沢、伊藤、佐倉の三人。
あいつらは、友達とかの部類じゃない。
本気で嫌ってるんだ。
ファンタジーな話があるわけない。
そう思っていたけど、これで確信した。
願いを聞いているんだ。
クマはその願いを叶えただけ。
人の体を使って、人に幻覚を見せて。
クマは俺に振り向いて相対した。
今、クマに見えるそいつはとっくに理解できてる。
美馬が言っていた深夜徘徊しているところを見たという発言。
気づかないうちに体に疲れがたまっていたことに軽い反応で済ませてしまったこと。
そして、あのぬいぐるみ……。
「お前なんだろ、楓」
知りたくなかった事実。
考えたくなかった思考。
知れば知るほど逃げたくなった。
考えれば考えるほど放棄したかった。
俺が彼女を直接攻撃できるわけがないのだから。
だけど、今の彼女はクマ。
声なんて届かない。
走ってくるクマに押し倒された俺は、首を絞められた。
前と同じように。
しかし、今度こそ俺はポケットからカッターを出して胸元を刺した。
泣いていた。
覚えていてほしい、それだけでいいから。俺の心にはそれだけしか残っていないから。
ぬいぐるみに好意を抱く女子に勝ち目などないから。
捨てるなんてことはできない。
だって、あれは、俺が初めて誕生日プレゼントで送ったクマのぬいぐるみなのだから。
プレゼントしたものに好意を抱かないで俺を見てほしい。
俺だけで頭をいっぱいにしてほしい。
それ以外のことなんて見なくていいから。
時間が欲しかった。
もっと考える時間が欲しかった。
どうしたらいいのか、もっと考えられたはずだから。
泡拭いて死ぬ理由が分かった気がする。
彼女の手で殺めているんじゃない。
クマのぬいぐるみ本体が呪いのように締めにきているのだ。
もう一度、刺す余力など持ち合わせていない俺は体が動かないまま、視界がぼやけたまま、終わった。
花沢が亜久里たちのせいにしたい理由は罪を擦り付けたいから。
花沢も自分のせいで自殺したなんて思いたくないだろうから。
人として正しいなと思った。
しかし、なぜ警察に連絡がすぐ行かなかったのか。
死体があれば、誰かが見つけて連絡するだろうけど……。
まあ確かに、あの場に来る人はいないだろうし、通っている間も人はいなかった。
クマの存在が知れ渡っているのかわからないが……。
「クマの正体、分かっているのになんで教えてくれないの?」
花沢が言った。
「言う必要なくね?もうわかってるだろう」
「……そうだけど」
「俺だって信じたくはないけどさ」
「どうしたらいいんだろう……きゃっ!!」
刹那、前方へと飛ばされた彼女は地面を転がり横たわった。
動けないのか、何も反応がない。
死んだ……?
いや、まさか。
横で空を切る音が聞こえると、途端に花沢のもとへとそいつは向かった。
クマだ。
やっぱり、関係しているんだ。
花沢、伊藤、佐倉の三人。
あいつらは、友達とかの部類じゃない。
本気で嫌ってるんだ。
ファンタジーな話があるわけない。
そう思っていたけど、これで確信した。
願いを聞いているんだ。
クマはその願いを叶えただけ。
人の体を使って、人に幻覚を見せて。
クマは俺に振り向いて相対した。
今、クマに見えるそいつはとっくに理解できてる。
美馬が言っていた深夜徘徊しているところを見たという発言。
気づかないうちに体に疲れがたまっていたことに軽い反応で済ませてしまったこと。
そして、あのぬいぐるみ……。
「お前なんだろ、楓」
知りたくなかった事実。
考えたくなかった思考。
知れば知るほど逃げたくなった。
考えれば考えるほど放棄したかった。
俺が彼女を直接攻撃できるわけがないのだから。
だけど、今の彼女はクマ。
声なんて届かない。
走ってくるクマに押し倒された俺は、首を絞められた。
前と同じように。
しかし、今度こそ俺はポケットからカッターを出して胸元を刺した。
泣いていた。
覚えていてほしい、それだけでいいから。俺の心にはそれだけしか残っていないから。
ぬいぐるみに好意を抱く女子に勝ち目などないから。
捨てるなんてことはできない。
だって、あれは、俺が初めて誕生日プレゼントで送ったクマのぬいぐるみなのだから。
プレゼントしたものに好意を抱かないで俺を見てほしい。
俺だけで頭をいっぱいにしてほしい。
それ以外のことなんて見なくていいから。
時間が欲しかった。
もっと考える時間が欲しかった。
どうしたらいいのか、もっと考えられたはずだから。
泡拭いて死ぬ理由が分かった気がする。
彼女の手で殺めているんじゃない。
クマのぬいぐるみ本体が呪いのように締めにきているのだ。
もう一度、刺す余力など持ち合わせていない俺は体が動かないまま、視界がぼやけたまま、終わった。