幸せな家庭
「青葉(あおば)、子どもたち見ててくれてありがとう」

友達に亜子は話しかける。自分の子どもと手を繋ぎつつ、実を抱っこしている友達は心配そうに亜子を見ていた。

「別にいいけど、どうなの?」

友達が亜子に訊ねる。亜子はニコリと笑った。

「もう終わる。裕也、離婚届を記入して送って。こっちで提出しておくから」

「えっ、嫌だ。まだ何も話し合ってないじゃないか!」

「話すも何も、最初からやり直す気なんてない。離婚一択よ」

「そんなの嫌だ!」

亜子に裕也が訴えていると、亜子のスカートを軽く真奈が引っ張る。

「ママ、離婚って何?」

幼い真奈にはまだ離婚という言葉の意味はわからない。これはチャンスだと裕也は縋るように真奈に目線を合わせ、言う。

「真奈、離婚っていうのはパパと離れて暮らすことなんだ!そんなの嫌だろ?」

だが、子どもというのは残酷なほど素直である。真奈はまるで花が咲いたような笑顔を浮かべ、「本当?パパいなくなるの?嬉しい!」と言った。
< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop