ピグ中毒




映画館には約束の時間より20分早く着いた。


ミキはまだ来ていないようだったから、僕はスマホでアプリにログインして、時間を潰すことにした。


すると、一人の女の子がお部屋に入ってきた。ミキだった。


「まさか、もう着いてます?」


「着いてるよ」


「どんな服着てますか?」


「赤色……かな」


「赤色……」


それからミキは何も言わなくなった。


「あれ、どうした?」


返事はない。


まさか赤色に何かトラウマでも?


なんて、なわけないことを考えていると、右の袖がちょんと、勝手に動いた。


振り返ると、そこにはショートボブの小さな女の子が立っていて、僕は急にブレーキを失った暴走トラックの運転手のような気持ちになった。


「初めまして、レモンミルクティーさん。ミキです」



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