ピグ中毒
「映画どうだった?」
と僕は、公園でブランコに揺られているミキに向かって尋ねた。
「まあまあ、ですかね」
「まあまあ」
「そう、まあまあです」そう言って、ミキはブランコからぴょんと飛び降りて、両手を挙げて着地した。
「ミキさなえ選手、10点!」
「ふはっ!」
あまりにもバカバカしく、そしてあまりにも等身大な振る舞いに、思わず飲んでいた映画の残りのコーラを吹き出しそうになった。
スマホの時計はもう22時を回っていて、でも、それでも、僕は何も言わないでおいた。
「ねえ、レモンミルクティーさん。私と付き合ってみますか?」
「いいよ」僕は迷わず、何のためらいもなく答えた。
「付き合おっか」
「いいんですか? 本当に」
僕はミキの言葉の意味が、きっと、正しく、理解できたと思う。
「うん。もうブレーキは壊れているし」
「どうなっても知りませんよ?」
とミキが笑った。
「知らない。どうなっても」
本当に知らなかった。どうなっても、もう、どうでも。