悪魔と私
Ⅸ 記憶の花
「ふあ~ぁ…」
少年は大きな欠伸をひとつすると、辺りをきょろきょろと見渡した。
「あれ、ここ…何処?」
目が覚めると、知らないところに寝ていた。
否、正しくは気を失っていた。
暗くて、じめじめしていて、とにかく何か嫌な所だ。
それによほどショックなことでもあったのか、何故こんな所にいるのか、何故気を失っていたのか、全然思い出せない。
「アイルッ!」
聞きなれた、クロードの声。
あの冷静沈着で無愛想なクロードが、とても焦っているように聞こえる。
声が聞こえてきた方角を向く。
「…っアイ…」
慌てて叫びかけた口を押さえる。
今出て行っても、クロードの邪魔になるだけだ。
クロードのことだから、心配する必要はないだろう。
でも、今すぐにでも駆けつけたく思うほど、そこに見えたものはルーゼにショックを与えた。