【大賞受賞】沈黙の護衛騎士と盲目の聖女

「もう、……お願い。一息に、……してくれて、いいから」

 息も絶え絶えといった様子でレオナルドに懇願すると、すぐに熱がこたえてくれた。

 彼から与えられた痛みが全身に響いている。けれど、この痛みが自分の呪いを断ち切ることになる。

 ——今だけは、あなたは私のものだからっ……

レオナルドはあまりのことにくぐもった唸り声を上げていた。

 雫がぽとりとユリアナの頬に落ちる。彼の汗か――涙か。律動に合わせるように身体を揺らしながら、ユリアナは呆然としながら最後の熱を受け止めていた。

――沈黙の後、息を整えたユリアナはそっと囁いた。

「終わったのね……」

ユリアナは眦から涙を一筋零していた。

 ——これで、終わり。もう、終わりなんだ……。

 レオナルドはユリアナを抱きしめながら、流れていく涙をすくうようにしてこめかみに口づけた。彼の汗ばんだ身体から立ち上る熱が、ユリアナを包んでいる。ユリアナは彼の背中に回した腕に力を込めた。重くのしかかる彼の身体が愛しくてたまらない。

 離したくない。でも、放さないといけない……。

 細く長い息を吐いたユリアナは、そっとレオナルドの頬に触れた。この手の先の熱が、愛を伝えてくれることを願いながら。

——この夜が明けなければいいのに。

「……レーム、もう」

 もう、いいから。そう伝える前に口づけられたユリアナは、言葉を吞み込んでしまう。

 ふたりにとって唯一の夜は長く、そして身を切られるように切なかった。ユリアナは最後まで想いを告げることなく、彼を抱きしめる両腕に力を込めて、最後は意識を失うようにして寝台に沈んでいった。

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