【大賞受賞】沈黙の護衛騎士と盲目の聖女
◇ ◇ ◇
——疲れさせてしまったか……。
レオナルドは意識を飛ばしたユリアナの髪をひとすじ手に取ると、そっと口づけた。
長年、想い焦がれていた彼女を腕の中に閉じ込めるように抱きしめる。
——このまま、ユリアナを攫ってしまおうか……。
どこか、遠くの国へ。ユリアナが聖女であることなど、誰も知らない国へ。レオナルドが王子であることを気づかれない国へ。二人で生きていくだけならば、何とかなるだろう。だが――。
ユリアナは片足が動かせず、両目の光を失っている。この屋敷内であれば、かつての記憶をもとに自由に動けるだろうが、違う場所に行けば不自由しかないだろう。これまで侯爵令嬢として人々に仕えて貰いながら生きてきた彼女が、庶民のように生きていくのは……盲目であればなおさら辛くなるだろう。
彼女をこの手に抱きながら、劣情を抑えることが難しかった。白い肌は上気して、淡い桃色に染まっていた。柔らかな肌に吸い付くような感触。いつまでも触れていたいと思うほど、彼女は魅力にあふれている。
「ユリアナ……、愛している」