ムショうの
お姫様は、いつだってドップリと愛されている。
なにも差し出さなくたって、愛される。
濃厚な蜂蜜につかるお姫様と、うすいうすい、濃度0・01パーセントの砂糖水につかる、わたし。
「あ、お砂糖、入れてなかったけどよかった?」
うのちゃんがたずねる。わたしは、無言でうなずく。
紅茶をすする、離婚して、貴族ぶっているうのちゃんのうしろで、ウエディングドレスに身を包んだ、ほんとうに貴族みたいなうのちゃん。
なんかシュール。
「わたしさぁー、この前ぬるくなった紅茶に砂糖足しちゃってさぁー!スプーンでガリガリしたけど溶けなくて、最後の方甘すぎて、グェッってなって!!」
「へぇ」
「うん!もーね、ノドがキュウウッてなってさ、首締められるニワトリってこんな気分なんだなぁって思って!!」
うのちゃんがまた、ケラケラ笑う。
いつも楽しそう。うのちゃんは、ちょっと目を離したら、軽々とどこかに行ってしまいそう。じゅうたんがなくても、どこかに飛んでいけそう。
結婚も、離婚も、うのちゃんにとったらポーンとやってのけちゃうものなんだろう。うのちゃんはきっと、キスのひとつやふたつで悩まない。
・・・そういうノンキなの、うらやましい。