ムショうの

 お姫様は、いつだってドップリと愛されている。
 なにも差し出さなくたって、愛される。

 濃厚な蜂蜜につかるお姫様と、うすいうすい、濃度0・01パーセントの砂糖水につかる、わたし。

「あ、お砂糖、入れてなかったけどよかった?」

 うのちゃんがたずねる。わたしは、無言でうなずく。

 紅茶をすする、離婚して、貴族ぶっているうのちゃんのうしろで、ウエディングドレスに身を包んだ、ほんとうに貴族みたいなうのちゃん。

 なんかシュール。

「わたしさぁー、この前ぬるくなった紅茶に砂糖足しちゃってさぁー!スプーンでガリガリしたけど溶けなくて、最後の方甘すぎて、グェッってなって!!」
「へぇ」
「うん!もーね、ノドがキュウウッてなってさ、首締められるニワトリってこんな気分なんだなぁって思って!!」

 うのちゃんがまた、ケラケラ笑う。

 いつも楽しそう。うのちゃんは、ちょっと目を離したら、軽々とどこかに行ってしまいそう。じゅうたんがなくても、どこかに飛んでいけそう。

 結婚も、離婚も、うのちゃんにとったらポーンとやってのけちゃうものなんだろう。うのちゃんはきっと、キスのひとつやふたつで悩まない。

 ・・・そういうノンキなの、うらやましい。




< 11 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop