カフェとライター





「お疲れ様でしたー」


「お疲れ様でした」

周りのスタッフさんにも挨拶しながら工藤戒李の後ろを少し離れながらついていく。



「今日の仕事はこれで終わり」

「はい、お疲れ様でした」

「そっちも。疲れたでしょ」

「いえ…、大丈夫です」




途中ずっと座って見学させて貰ってたし、私は戒李くんみたいに体を動かしたわけでもなく体力を使ってるわけでもないから。


戒李くんはこれが当たり前となっているのだろうか。

涼しい顔で疲れを一切表情に出さない。




「家、どこ?」

私服に着替えた戒李くん。



メンバーを見送って帰ろうとしていると、聞かれる。


「えーっと…、」

住所をざっくりと伝えると



「それじゃあ、新と戒李を送った後でいいなら送れますね」

にこっと爽やかな笑顔を向けて言ってくれたのは

マネージャーの一宮さん。

「え、」


その言葉に立ち止まる。


「いいんですか…?」



自力で帰ろうと思ってた。

はい、と言ってくれる一宮さん。

思わず、戒李くんの方を見ると、斜め上から私を見下ろして




「甘えとけば。手厚く対応するように事務所の上からも言われてるし」





表情を変えずに、そう言ってくれた。

正直、電車を乗り継いで帰るよりも車で送って頂いた方がすごく助かる。


…それなら。お言葉に甘えよう。ありがたい。


「ありがとうございます」



一宮さんは、この後事務所に帰るらしい。まだ仕事を?と驚いたけど、いつものことらしい。

戒李くんも新さんも当たり前かのようにしていた。



神様のような一宮さんにお礼と頭を下げて乗り込んだミニバン。

2人とも顔には出していないがやっぱり疲れているのだろう。



座席に座ると、くた、として動かないし会話もない。



動き出して流れる外の景色を眺め、今日の出来事を振り返る。

今から、こうして、初体験をこの1ヶ月たくさん見せてもらうんだろうなぁ。





「かい、憂ちゃん、お疲れ様でしたー」


「ん」

「お疲れ様でした!」

しばらくすると、

新さんの家についたようで、颯爽と降りていった。電車で通る時に見かける高層マンションが立ち並ぶ地区。


どこも高級そうなマンション。



やっぱり、こういうところに芸能人住んでるんだ…。

また数分走り、車が敷地内に入っていく。

「戒李」

「ありがと、」

止まった車と

同時に聞こえた運転手さんの声に、戒李くんが動き出す。開けられたドアから見た、エントランス。

…私の家が最後でよかったと思った。



レベルが違いすぎて、見せられたもんじゃない。






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