カフェとライター
翌日。
初日から自分とは世界の違うものを沢山見たせいか
刺激が多かったようで寝たような寝てないような。
そんな気持ちで迎えた2日目。
迎えにきてくれた車に乗り込めば
運転手さんの優しい顔から始まった。
「おはよう。眠れた?」
「おはようございます、はい、大丈夫です」
ありがとうございます、と返せば
バックミラー越しに微笑んで前を見据える運転手さん。
送ってくれた分、私より後に仕事を終えて、私たちより早く仕事が始まっている。
それなのに疲れた顔を見せずに私を気にかけてくれて本当に優しい方だ。この世界は、私よりはるかにハードな仕事をしている人たちばかりだ。
疲れた様子なんて、絶対に見せられない。
ふぅうと、気づかれないように息を吐き出して
こっそり気合を入れる。
まだ始まったばかりだ。この生活のペースをなるべく早く作らないと。
1ヶ月、頑張らないと。
…車の中が暖房が効いて温まり出し気持ち良くなってきた頃。
「おはよう」
「はよう」
車は戒李くんのマンションへ。
時間通りらしく、
車が停車したと同時にドアが開き戒李くんが乗り込んできた。
「おはようございます」
「・・・おはよ」
座席から少しだけ立ち上がり頭を下げる。乗り込んできた戒李くんは私をチラッと見て、すぐに前の席に腰を降ろした。
まだ眠いよね。
特別声をかける用事もない。
空気となり車が今日の仕事場であるドラマ撮影のスタジオへ向かうのを大人しく待つ。
「行ってらっしゃい、頑張ってね」
優しい運転手さんの声を背に、車を降りれば、
ツン、と寒い風が一気に体を包み込む。
暖かい中にいた私は、思わずその寒暖差に肩をすくめた。
「・・・昨日」
「え?」
前から聞こえた声に顔を上げて
戒李くんの方を見る。
戒李くんは前をみたまま。
「寝れた?」
気遣ってくれているのだろうか。話しかけられるとは思っていなかったので、理解するまでに少し時間がかかってしまった。
「あ、はい。寝れました。しっかり寝てきました」