カフェとライター
「・・・そう」
「はい」
少しぎこちない会話。
昨日は撮影続きで忙しそうで朝一の挨拶の時にしかまともに会話できていなくて。
フランクに話せたのは、あのパーティーの日くらいだったなぁと思う。
あれは、たまたま再会した高校の同級生としての会話だったな。
今は、仕事上の付き合いとしての会話なんだからこうなっても仕方ないか・・・
空気が違くて少し居心地が悪く困ってしまう。
慣れた様子でなんの迷いもなく進んでいく姿に道順もわからない私は黙ってついていく。
「入館証。持ってるよね」
「あ、はい。昨日・・・」
一宮さんから別れ際に頂いた。
言われて、すぐに肩にかけていたトートバックから取り出す。
ピといい音が鳴り、そばに立っている警備員さんに頭を下げられる。
返しながらそのまま戒李くんの後ろをついていく。迷路のような廊下を進んで行き、工藤戒李さま、と書かれた楽屋。
ドアを開けて、入っていく戒李くんを見て、
ふと足を止めた。わ、、そっか。今来た道を振り返り考えていると。
「・・何してんの?」
数歩、先に入っていた戒李くんが私を見て怪訝そうな顔をする。
「あの、えっと」
「入んないの?」
「や、楽屋の中にまでずっといるのは流石に…」
密着、と言えどずっと一緒の部屋にいて出番を待って、と言うのは流石に戒李くんの自由がなくて迷惑すぎる。
ましてや今をときめく人気アイドルだ。密着がついているとどこまでの方が周知しているかは存じないが、側から見たらわからない女が戒李くんの楽屋に入り浸っていると思われる。
変に捉えられたら、
それもそれで申し訳ない。