カフェとライター
「おはようございます」
「おはようございます」
「あれ?今日は違うマネージャーさん?」
「いや、今、密着でついてくれてるライターさんです」
戒李くんは、スタッフさんやキャストの方に私の紹介をしてくれた。
おかげで、少し居やすくなる。
現場に入って始まってしまえば、ここからは私は邪魔をしないように、遠目から、眺める。
完全に、視聴者目線になってしまうのだけれど。
資料で見ていたドラマの登場人物が目の前にいると思うとすごい。女優さん、すごく綺麗。
男優さんも助演でメインではない配役でも普通に街にいればかっこいいと目を引くレベルで。
仕事しか頑張るものがない。それは幸せなことでもあって、私に出来る最高の仕事を、彼に捧げて見せよう。
そして、みんな通りすがるといい匂いがする…。ぼんやりそんなことを思ってしまう。
カットがかかれば、俳優さんに戻るのだけれど、撮影が始まればもう、見ていたドラマの役そのもので。
その人にしか見えなくなる。
長いセリフも、早口で次々と飛び交う医療用語も。
全部が本当に自分の咄嗟に出た発言のように聞こえるのだけれど、
これを全部暗記していっているのだと冷静に考えると、尊敬でしかない。
二日目は空き時間がありながらも深夜までその撮影は続き、他の出演者さんはまだ撮影がある中、戒李くんの今日撮らないといけない撮影は終了したとのことで退勤となった。
その後もCM撮影、雑誌の表紙撮影などなど目まぐるしく進んでいき…
でもどの現場でも戒李くんはスムーズに私を紹介してくれ事務所も事前に話を通してくれていたために、過ごしやすく密着させてもらうことができた。
不規則でハードだけれど、少しずつ緊張感も解けて慣れてきた。
ドラマの撮影は特に、数日すると出演者の方もスタッフの方も私にまで話しかけてくださり本当にありがたい。
居心地良い場所となった。
今日で1週間。
1週目が終わる今日はロケだ。
なんでも回想シーンとのことで、戒李くん演じる役が医者を目指すきっかけとなった出来事のシーンを撮るとのことで、郊外の学校に来た。
高校時代ということで戒李くんは制服姿だ。
「…何」