カフェとライター
確かここへくる時に見かけたけれど、どこだったけなー…

…懐かしい。

自分の母校ではないけれど、この学校の雰囲気が懐かしい。

いいな、と思ってしまう。高校時代。少しだけ戻れるのなら、戻りたいな。母校の先生は元気かな。

名前、思い出せない先生もいるけれど。顔は覚えてるんだけど、あだ名もわかるけれど。



フルネームが……、




トントン、と一段ずつ階段を降りて、

……あ。見つけたのは図書室。

窓から見れば、中はもちろん誰もいない。

開くかな?

「お」

ダメ元でドアに手をかけて引いてみれば

鍵はかかっておらず、空いていた。これ、最後に出た人怒られるやつじゃないの。


ツン、とする、図書室特有の匂い。懐かしくなって、自然と笑みが溢れる。進んで、辺りを見渡せば、並べられている本棚。



わー……

中央の机に座って、上半身を机に突っ伏す。

…懐かしい。目を閉じて、深呼吸をする。

この匂い、この空気。この静かな空間。高校時代、とても大好きなものだった。

部活に入っていなかった私は、教室の次にこの部屋が一番いた場所だった。



…そっか。戒李くんともここで…

懐かしくなって、記憶を辿る。

大人になった姿での高校生姿が見られるとは思わなかったけれど。制服の色も違うし、髪の毛も顔も大人っぽくなってしまったけれど、脳裏には。

今よりも幼くて、でもあの時からこの世界に入って有名になっていた彼の姿が思い出せる。


ぼんやり。電気をつけずに入ってきたので、窓から差し込む光が机の上に線を描いているのを視線で追う。





暖房もつけていないから少し肌寒いけれど、それも心地よく感じる。


寝ちゃいそう。居心地が良くて。喉の渇きなんてすっかりどこかへ。

自販機探しはまた後でいいや、と深呼吸を繰り返し、微睡む。














ふわ、と前髪が動く気配がして。ん、と目を開ける。


寝てた?状況がわからず目だけ辺りを動かせば。

ブレザーの袖。
そしてその袖から出ている手が、私の前髪に触れていて。

あ、





反射的に顔を上げると、

「…何してんの」


「工藤さん、」



戒李くん、

思わずそう呼んでしまいそうになったのを咄嗟に変える。

座ってだらけている私の横に立っている戒李くん。

一気に現実に引き戻される。


「あ、撮影、!!」

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