カフェとライター
「大丈夫、まだ時間かかるって」
そう言われてそばに置いていた携帯を見る。
ちょうど離れて20分。ここに来て15分ほど。あっという間に時間は過ぎていた。
「ごめんなさい、」
「別に。そんな探してない」
「…すみません…」
少し、ふらっとしただけなのだけれど、
密着の仕事を頂いている以上、謹むべきだっただろうか。
申し訳なくなる私から、彼は視線をそらす。
「……ここにいると思った」
ぽそり、そう言って窓の外を眺める戒李くん。
私と同じように、あの頃、をやはり思い出してそう思ってくれたのかな。
「…やっぱり落ち着きます。私はここが」
その背中を見ながら、そういうと、振り返って私を捉える。
…あの頃と、何も変わってない…私は。
「…俺のこと知ってんの」
ぽそり、私に落とされた言葉。その言葉を、私はよく覚えている。
「……知ってますよ。有名ですもん。工藤戒李くん」
あの時より、少し歳を重ねた声で。あの時と同じように、あの時よりも少し背が高くなったような気がする彼に向けて。
答えれば、ふ、っと彼は笑って空気が柔らかくんった気がした。
私は大人になった状態で、まるで高校時代に戻って、戒李くんと話している気分だ。
ずっと、みていたい。そう思ってしまうくらいに綺麗で。
あの頃もだったけど、もっともっと有名になってしまったね。
頑張ったんだね。
あの時と同じ距離にいるけれど、もう、中身がすっかりかわってしまった。