カフェとライター
工藤戒李くんを、間近で初めて見たのは
高校3年生の春だった。
同級生に芸能人がいるとは聞いていたけれど、クラスも違うので会うこともなくて。
仕事が忙しいのか授業やテストは受けにきていたみたいだけれど、集会などでは見かけることもなくて。
このまま会うこともなく卒業するのだろうと思ってた。
頭の片隅に、同級生に芸能人がいる、そんなレベルだった。
だから。
「……!」
び、…っくりしたぁ…
いつも通りに図書室に来た時に、準備室で彼が寝ていたのを見つけた時は、びっくりした。
高校3年間、私は図書委員で。
図書委員は名ばかりで、月一の委員会で集まる以外は割と自由で。
図書室は放課後は開放されているけれど飲食禁止、騒音もNGなため、割と自由に過ごせる学習室の方に勉強したい人は流れていく。
だけど、私は無音で過ごせるこの場所がすごく好きで。居場所だった。
特に図書委員だけが入室できる(と言っても一般生徒はそもそも来ようとしない)図書準備室がお気に入りで。
ナンバリング登録しておらずまだ本棚に並べられない新刊や、古くなって貸し出しできなくなった古書が山積みになっていて。
狭いこの部屋が落ち着いて好きだった。
…そんな、誰も来ないこの辺鄙な場所に、私以外の人がいたのは初めてだった。
……だれ?