カフェとライター
「…だれ」
それは、こっちのセリフでもある。
起き上がって顔が見えてそこで、初めて あ、噂の、と思った。
工藤戒李くん。
じいっと細目で眠そうに見つめられるから、「…図書委員です」それだけ言った。
それだけで、
ここが図書準備室だと思い出したのだろう。
あぁ、と声を漏らした後「ごめん」と謝罪された。
「…大丈夫です。ここ、ほとんど誰もきませんから。だから、ごゆっくり」
別に私の部屋でもないし、謝られる筋合いはない。できるだけ和やかな笑顔…と言ってもぎこちなかっただろうけど、そう言って、作業が終わった本を棚に戻していく。
返事は、返ってこず。
また、動く気配もないので、
ちらっと工藤くんの方を見ると。
まだじいっと私の方を見ていて。まだ、寝ぼけているのだろうか。動けなさそうだ。
「疲れてるんじゃないですか?もう少し寝てても大丈夫ですよ」
「ん…眠い」
そう言って。ぼうっとしている彼。
もう一度寝るか迷っているのだろうか。
そりゃそうか。知らない人間がいたら、落ち落ち寝てもいられないかな。
「私、退室しますね」
「…え?」
「…大丈夫です。誰にも言いませんから」
片手を工藤くんの前に出し、大丈夫、と伝えて後ずさる。
まだ、やり残しの仕事はあるけれど、また明日すればいいや。全然急ぎじゃないし。そう心の中で会議をして床に置いていたカバンを取る。
「いや、別に…」