カフェとライター




「お仕事」


ゆっくりと口を動かしながら単語を口にすれば、

「最初の質問がそれな人初めて会ったわ」

そう言われて、首をかしげる。

おかしな質問だったのだろうか。

「みんなすごいねーとかかっこいいねーって言うのに」


「あぁ」

なるほど。先に褒めるべきだったのか。申し訳ない気持ちになった。


「心配してきた人は初めて」


ふ、と笑う工藤戒李。

「よくわからないけれど、仕事もして、勉強もして、大変そうだなーって思って」









ふと、

なんとなく、思ったのだ。


こうして合間を睡眠に費やさないといけないほど、疲れているみたいだし。

勉強だけでも大変なのに、休みなしで仕事している彼は本当に大変なんだろうなと思って。



「今は学業優先だから。仕事は減らしてるし全然大変じゃない方」

「そうなんだ」



「ん。まぁ、高校卒業っていう資格はちゃんと取っとかないと後々ね」

出席日数が一番やばいから、とりあえず来ないとな、という彼。


時々、素朴な疑問を投げかけて、戒李くんのことや芸能界のことを知りながら過ごしていた。

ここに来てくれるたまの逢瀬がいつの間にか当たり前になって嬉しかった。

彼はいい場所を見つけたと思ってきまぐれできてくれていたのかもしれないけれど。



私はこの少しの時間がとても嬉しくて。

1人で静かで、勉強するのも好きだったし今でも好きだけれど、誰かと勉強の合間に他愛もない話をするのも楽しくて。



学習室を好む子たちの気持ちが、少しわかった。



そして、口ではそういうけど、見る限り大変そうな彼が、少しでもここで落ち着けたらなって思ってた。


向こうも居心地がよく思ってくれてたらいいなって。安らぐ場所であっと欲しいな、と思ってた。




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