カフェとライター
あの曲が、あの歌詞が、私に勇気と癒しをくれた。曲を、メロディを、絶対に忘れたくなくて。
忘れないようにずっと口ずさんでいた。
「そんなレアな曲なんて知らなかったんですけど、あの曲と出会えて私は運がよかったです」
笑顔で言うと、にやっと笑った新さん。
「もいっこいいこと教えてあげよっか」
「え?」
いいこと?
「ういちゃん、実はあの歌詞はね、」
「新」
急に、今まで黙っていた戒李くんが新さんの名前を呼ぶ。
「あ、だめ?」
「えーっ、教えてあげればいいじゃーん」
と不服そうに口を尖らせる来くん。
「言ったら戒李が怒るって」
残念、とへらっと笑った新さん。
戒李くんからの制止。企業秘密だったのかな。
少し気になるけれど、
NGが出たので深掘りしない方がいいのだろう。
「きつくない?今、」
心配そうに声をかけてくれたのは光くん。
ーー今。
大丈夫ですよ、と笑顔を返す。
「たまにあの時のことは思い出すんですけど、いまはのびのびできてます。大丈夫です」
「そっか」
「正社員じゃなくて、アルバイトみたいなものなのがちょっと情けないですけどね。出版社も契約社員ですし」
「いやいや、仕事してるだけでじゅーぶんでしょ!」