カフェとライター




こうして細々と依頼を受けるようになった。女優さんのインタビューの件も本当は断ろうと思ったのだ。

だけど、せっかくだからと押されて負けた。


今となってはさせて頂けてよかったと思ってるしやりたくなかったわけでもない。


お陰で、
私だけでは絶対に出会えなかっただろうテレビの向こう側の女優さんと関わる機会も得られて。


認知され、こうして場違いな会場にまで招待されて…、

身分不相応だ。


私には、煌びやかすぎる。

「ちょっとすみません」



他にも松村さんを狙って話しかけようと辺りに控えている視線を知っているのか知らずか…

知っていて知らないふりをしてるのだろう、松村さんを独占し続け話に華を咲かせている笹村さんと松村さんにそっと一言断りを入れて、その場を後にする。

有名女優さんが目の前にいるのに撤退するとはファンがいたら怒られるのだろうな、と思いながらも、各々著名人を中心に塊となっているグループの間をすり抜けながら会場を後にする。


広間を出れば、少し緩和された廊下。待機している関係者もまばらにいる中で、真っ直ぐにトイレへと向かう。


…ふぅ。…人混みは元々苦手だ。ざわざわとうるさい場所も。


慣れない場所だからこそ余計に疲労がどっとくる。少し、ここで休憩してから戻ろう。







コツコツと入っては出ていく他の利用者の足跡や気配を感じながら、壁に頭をつけ目を閉じる。



ヴーヴー
10分くらい経っただろうか。スーツのポケットに入れていた携帯が震える。



視線をポケットへと向け、携帯を取り出すと光っている液晶画面に通知で笹村さんからメッセージが入っていた。

【どこいる?合流する時連絡ちょうだい】

戻ってこない私に気付いたのだろう。
すみません、休憩しています、承知しましたと手早く返信してポケットは戻し、また同じ体勢に。



…ふぅ。

そこからさらに休憩をして。

そろそろさすがに戻ろうとトイレを出て、また広間へ向かう。

広間へ近づくにつれ人が増えてく。よし!がんばるぞ!グッと両手を握りしめながら気合を入れ直す。、とーーー、

「、すみません」


「わ、すみませ−−−、ん」





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