カフェとライター
「何かあった?」
「別に」
………。構ってといった割に聞けばこの調子だ。なんだ、と思っていれば。
「あと、少ししかないね」
何を…、と聞こうとして。
彼の視線がカレンダーに向いているのに気づいた。
…戒李くんも、私と同じことを考えてくれていたのだろうか。
この瞬間が、時間がもう残り少ないことを。
「そうだね」
どうすることもできないけれど。ゆっくり、進めばいいのに、とは思う。
お互い、だからと言ってその先を話すことはなく。
カレンダーをしばらく見つめたままで。
なんとも言えないしんみりした、気まずい空気になってしまった。
問題の続きを解こうと、必要な今彼が見ていた参考書に手を伸ばし、手元に引こうとすれば。
「、」
トン、と取れないように表紙に乗せられる戒李くんの手。抑えられて。手を伸ばし引っ張る私とそれを止める戒李くんの図になる。
いじわるだ。まだ、構って欲しいのだろうか。
「戒李くん、それ、使う、」
だから貸して、と