カフェとライター
クスッと困ったような苦笑い。視線を晒した彼が動いて、一瞬浮かんだあの頃の記憶から、すぐに現実に引き戻される。
「…変わんないね」
すっと、グラスを持っている手を捕まれ引き寄せられる。
溢れる、!
咄嗟にそう思い争うことなく素直に引き寄せられた体。目の前に近づいた顔に息を呑む。静かな、怒り。再開した時に向けられたものと同じだ。
「……むかつく」
ぽつり、吐き出された言葉。冷たく貫いてくる視線の色は、怒り。
「俺ばっかりで」
「………、」
「あの時も。今も」
ぐっ、と無意識だろうか。強まる掴む力に眉を潜める。
すっと手からグラスを抜き取られ、視界の端でそれがテーブルに置かれたのが見えた瞬間、視界は天井へ。
背中がソファにしずむ。
目の前には近づいた綺麗な顔。
咄嗟に顔を横に背ける。頬に触れるのは、垂れた彼の前髪で。
「やめて……、」