カフェとライター
「どうだった?京都」
喋りながらも
手はすらすらとサインをしていく。
私は書いたサインを受け取り、インク染み防止で紙を挟む。世界観がすごかった話や、殺陣の話、ぽつりぽつり感想を話す私に笑顔を見せてくれながら、手は止まらず進んでいく。
私のど素人なありきたりの感想なんてつまらないんじゃ、と内心気になりながらも、見て感じたことを話す。
「あ、じゃあ 富田マオとは入れ違いなんだ」
一通り感想を述べ終わり、来くんも一つの束を全て書き終えた所で。
ペンを止めて空を見つめながら思い出したように呟いた。
「とみたまお??」
何も考えず、来くんから聞いた名前をそのまま繰り返す。
「知らない?」
そんな、まさか。
「いえ、知ってますよ!有名じゃないですか」
さすがにわたしも知っている。
アイドル兼モデル出身で、今は俳優業をメインにしている、毎クールドラマに引っ張りだこの有名女優さん。
私より2つほど年上だった気がする。
「富田マオさ、この世界では結構有名なワガママでスタッフからの印象も悪いんだけどさ」
「ほぉ…、、」
テレビなどの印象と、実際が違う、業界あるあるなことは、この世界に密着しはじめて気づいた。
「戒李めちゃくちゃ狙われてるんだよね」
少し、嬉しそうに、楽しそうに。少し、悪ガキのように。ニヤニヤしながら言う来くん。
「そうなんですね…」