カフェとライター
久しぶりに他人に向けられた〝敵意〟
いないと思ったことに驚いたからか、釘をさされたからか。心臓がバクバクと跳ねる。
こういうことが、あちこちであるのだろうか。
芸能界、怖い。
「…どうした?」
「え、?」
しまった、集中してなかった。台本を開いて、文字の羅列をぼんやりと眺めていた所にかけられた声。ふ、とかかった影に顔を上げれば、戒李くんが見下ろしていて。
撮り終わったようだ。
「あ、お疲れ様です」
慌ててパイプ椅子から立ち上がる。へら、と笑うと、戒李くんには怪訝そうな顔をされた。
あからさまに表情に出る戒李くんに、苦笑いしてしまう。
仕事中にぼんやりして怒ったかな。
衣装や小道具を外すために動き出すだろう、
その後ろをついていこうと一歩、動くが。