カフェとライター
スケジュール表をしっかりと見て、動く。
できる限り鉢あわないように気をつける。目障りだからいないで、と言われたけれど。
さすがに戒李くんと富田さんが同じシーンの時にいつも席を外すというのはできないもので。(戒李くんにも不審がられるし)
富田さんの視界に入らないようにこそーっと、影に、他の人の後ろだったり、モニター越しに演技を見守る。
モニターを見つめながら、やっぱり、綺麗だな。と思った。
この中では、世界観の中では、全く別の人物で。
待ち伏せして私に釘を刺してきた〝富田マオ〟ではない。高貴なお姫様。
そして、お姫様に対峙している彼も。
表情が読めなくて、何を考えているのかわからない、〝工藤戒李〟ではない
あの時代に生きている青年だ。富田さんも、どれだけワガママ、で通っていても、世間一般には今撮っている姿が映る。その姿に、演技に魅了されてまたファンがつくのだろう。
間近で捉えられても、薄化粧でも綺麗な肌。
お似合いだ、と思った。
釘なんか刺されなくても。
今推し出されている女優さんがわざわざ声なんかかけてこなくても。私はただの一般人だ。
こうして、綺麗な絵面をひたすら見学ながら、自分の身の程を自覚しながらクランクアップした映画。
撮影自体は撮り終わったけど、ここからまた声入れなどがあるみたいで完全に終わりではないそう。
「ごめん、こんな時間で」