カフェとライター



聞かれて、少し考える。


「違う世界に来たみたいでした。来たみたいって言うか、実際に違う世界に来てたんですけど」



「輝く人は違うなーって思いました。やっぱり、私たちファンと、芸能人は住む世界が違うなーって、」

凡人の、何もない私とは大違いだった。

努力の量も、人への魅せ方も、何もかもが。

「…わざと言ってる?」



「え?」

わざと?…わざとなんかじゃない。


私の本心だ。

だって、お似合いだと思った。


画面の向こうでやりとりをする2人が。美しくて、綺麗で。華やかで、オーラがすごくて。

普通の人達と、〝芸能人〟の違いは、こういうお仕事をされる方って、うまく言い表せないけれど、こういうことなんだなって思った。



褒めたつもり、なんだけど。

冷めた目に、射抜かれる。どうしていいかわからなくて、でもツンとした空気になってしまって。



聞かれたことに、素直に答えただけなのだけど…。

やらかした…?最後の最後に機嫌を損ねた?



すーっと血の気が引く。住む世界が違うことは変えられない事実なのに。


なぜ、戒李くんの地雷を踏んでしまったのかが

わからない。

「あ、ここで大丈夫です!」


少しの沈黙にどうしようかと思っていれば。

タイミングよくタクシーは私の自宅前。運転手のおじさんに声をかければ路肩に車を付けるために減速を始める。


これ以上気まずくなる前に着いて良かった。

内心ほっとしながら、車が停車しドアが開くのを待つ。





「お先に失礼します」

タクシーから降りようと地面に足をつけ立ち上がる。



振り返って空いた私の方の席にズレた戒李くんに別れの挨拶を言おうと振り向くと。







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