カフェとライター
「どうぞー」
どこでもお好きなところに、
ってことだろうか。すっとカウンターへ促す手を見て、端から2番目の席に座った。
少し離れた窓辺に品のいい年配の女性が座って小説を読んでいた。
店内はそれだけで、平日の午前中なこともあり、こないだ覗いた時のようにそこまで混んでいないようだった。
一応工藤戒李だとバレないように気をつけて適当にコーヒーを頼んだ。
カチャカチャと心地よい音を立てながらひいてくれるの
を見つつ、メニュー表の近くにあった写真たてのようなパネルを手に取る。
今月の小話とタイトルされ、その後に綴られた文章は些細な日常を切り取ったポエムで。すーっと目を通した後に、最後に記された水野憂、の名前に目を止める。
「いいポエムでしょう?」
カウンターの向こうから
覗き込むように俺の手元を見て声をかけてきた女性。
「うちで働いてる子が毎月書いてくれてるんですけど、常連さんにも大人気で」
「そうなんですか」