カフェとライター
「1ヶ月密着。ライターは水野憂指名で。その条件断ってきたらもうやんない」
向こうが断るわけないだろうけど。
ポケットから、さっき本人から受け取った名刺を取り出す。スマホで撮影して、一宮さんのケータイに送る。
「この子。それ以外は受けない」
「これがさっきの?」
「………」
「…お前もそういうとこあんだな」
一宮さんはそれ以上何も言ってこなかった。今までたくさん依頼されたけど、どれも面倒くさくて断ってた。
それが、
こうもいい方向になるとは。
どこもできていなかった工藤戒李の特集。
これの価値は自分でも分かっている。
会社からこちらからの条件を聞かされて憂はなんて答えるかな。
ってか拒否権ないよな。困った顔するんだろうな。簡単に想像できて、笑える。
一宮さんの仕事はめちゃくちゃ早くて。次の日の朝にはすぐに電話して、向こうは即答で承諾された、と聞いた。