【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 隣に立つレクシオールの顔は苛立ちを隠さず、今にも舌打ちせんばかりの渋面だ。そしてそれに挑発するように、フレデリクは得意そうな笑みを彼に向けている。

 火花散る視線と共に伯爵の背中から漏れ出す冷たい怒気に、パメラは背筋が凍る思いだった。

(公爵閣下のやる気を引き出す為とはいえ、やりすぎですわハイネガー伯爵! 閣下も取られるのが嫌なんでしたら、もっとお優しくされたらよろしいのに……!)

 もちろんそんな滅多なことを口に出せないし……このまま公爵の機嫌が悪くなるのを黙って見ているわけにもいかず。

「お、お二人ともっ、もう十分に分かりましたから! その位にいたしましょう!」

 胃が痛くなる思いを感じながら、パメラは手を叩いて合図を送り演奏を止めさせる。

「いい感じにできていたと思ったけれど、なにかおかしかったかい?」
「あ、あの……レクシオール様。いかがでしたでしょうか?」

 リュミエールはおずおずと彼に尋ねるが……レクシオールは怒りで頭痛までしてきたのか眉間を押さえて目を吊り上げ、彼女の手を強引に奪う。

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