【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
 これからもできる限りは付き合ってやるが……そうそう時間は取れないし、とっとと上達してもらわねばならん。……だが、そう思いつつもわずかにどこかで、リュミエールとの交流に心を浮き立たせている自分もいる。

 ……昔を思い出すのだ。両親がまだ元気だった時の……特に、母のことを。

 容姿や性格が似ているわけでも無い……たまたまこれだけ長い期間じかに接しているのがこの娘だけだから、重ねているだけだ。

 小さな頃はよく傍で座って見ていた……。
 こうやって父も母のエスコートに手を焼いていたんだ。リュミエールほどひどくはなかったがな……お世辞にもあまり上手とも言えなかった。

 でも、その時の二人ともひどく幸せそうだった。
 その仲睦まじい姿を眺めているだけで俺は嬉しくて――。

 ――ズキン……。

 先程と同じように頭に痛みが走り、俺は額を抑える。
 寝不足のせいか……?

 机の上には山積みの資料と、片付け切れていない仕事の数々。
 春にかけての新規工事の発注の確認や、課税率の調整、国境周辺の守りも諸侯に任せきりではいけない……。手を付けなければならない仕事はいくらでもあった。

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