【WEB版】空っぽ聖女と婚約破棄されましたが、真の力が開花したのであなたなんてこちらから願い下げです!~義姉に全て奪われたけど、銀竜公爵からの溺愛が待っていました~
『――ハーケンブルグ公爵殿……実は王太子様の命令で、あなたに恥をかかせようと狼犬を数頭放たせ、馬の尻を追わせることになっております。その馬の尾っぽには狼犬が良く好む匂いの薬が塗られておりますので、機を見て馬をどこかに放ち下され』

(あの王子……どういうつもりだ……!)

 俺が周囲を探すふりをして、それとなく後ろを振り返ると、確かに毛先が油のようなもので光っている。匂いは良く分からないが、鼻のいい狼犬からすればこれで十分なのかも知れない。

 しかし本当だとしたらなぜ、長く王太子に仕えているルビディル氏が、その意に背くようなことをするのか。

(もしや、心変わりした……? 有り得ないことではないが)

 王太子の評判があまり芳しく無いのは、北の辺境を預かる俺などにも届いている。もちろん、こちらも公爵家としてそれなりの権力を有しているのだ。仲たがいするのは不味いと彼の独断で行動しているということも考えられるし、未だそうとはっきりしたわけでは無いが……。

(だが、何らかの仕掛けがあるのは間違いない……むッ!)

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